宮坂木造研究開発室の木造の家づくりガイド
生活の質
住み心地の良い木造住宅に 樹齢より永く暮らせるように
昔から続けられてきた造り方に現代の技術をとりいれ
変化し続けるライフスタイルの器となる木造住宅をつくりましょう

軸組構法
日本の気候・風土になじんできたのは、軸組構法による住まい方です。
次の4つの設計事例は、その典型です。
「土壁と木の家」

 土壁の家は、夏すずしく、冬あたたかい、と言われてきました。その原因は、「土の熱容量の大きさ」と「木の吸放湿作用」にあります。土の熱容量の大きさは、石焼きいもの石とおなじ役割を果たします。木の吸放湿作用は、炊いたご飯をいれるオヒツとおなじ効果です。土壁の土が、部屋の暖かさや涼しさを蓄熱し、骨太の木が年間をとおして部屋の湿度を安定した状態に保ちます。

 熱も湿度も高いほうから低いほうへ移動するので、この家では土壁に外断熱を施し、外壁に通気層を設け、自然で健康的な室内環境を設計しました。

「シンプルな骨組の家」

 敷地の広さは40坪ほど。建蔽率は50%。この「シンプルな骨組の家」は、都市圏のどこにでもある住宅街に建てられる「普通の家」です。普通であるための条件を次のように考えました。

・誰でも住めるように間取りの変更が容易
昔ながらの「木造の良さ」が味わえる
街並みを整える親しみやすい外観

 限られた敷地に建築主の要望を最大限にとりいれると、建物の形状は複雑になりがちですが、複雑な建築主の要望も整理するとシンプルな骨組に納まります。骨組をシンプルにすることで、工事費が経済的で丈夫で長持ちする家になります。

「柱立ての空間」

 日本のように高温多湿な所では、壁を用いずに柱と梁をつかって家を建てる方法が発達してきました。古くは高床式住宅や寝殿造りの住宅が、これです。この方法はお寺や神社でも使われ、中規模から大規模な建物を可能にしました。

 樹を製材せずに丸太を柱として使い、製材品や集成材、木質材料とよばれる複合建材も組み合わせ、樹をまるごと、頭の先から尻尾まで利用するように設計したのが、この「柱立ての空間」です。家ではありませんが、複数の家族で利用する別荘や、多目的な用途につかう中規模な建物が、この方法で可能です。

「木なりの家」
−暮らしの変化に対応できる家−


 このような間取りの考え方をとりいれると、住みながら完成させていく「未完成の家」ができます。住めば住むほど、住みやすくなる家ができることになります。

 フスマを外せば、部屋が二つ以上つながり、用途に応じて室内の広さを変える知恵が日本の住宅の特色です。「田の字型の間取り」は文字どおり、四つの部屋が「田」の字につながり、間仕切りのフスマや板戸を外せば、一つの大きな室内になる間取りのことを指します。「動かない柱の配置」と「動く間仕切りの配置」を組み合わせると、用途に応じた間取りができます。

ティンバ−フレ−ム

日本は、現在、木材消費量の約80%を輸入している世界最大の木材輸入国です。国産材も輸入材も森林を形づくる同じ樹です。
国産材より多く使われている北米材(カナダ・米国産)をより長く使う方法の一つとして、私たちはティンバ-フレ-ムの設計に取り組んできました。

ティンバ-フレ-ムとは
もともとヨ-ロッパで生まれた(14〜15世紀にドイツ、16〜17世紀に英国)
軸組構法のことです。ツ-バイフォ-が普及し始める1830年代以前の米国でログハウスと同様に200年以上建てられていました。
ボックスフレ−ム(英国) クラックフレ−ム(英国)
いまでもニュ−イングランド地域(メイン州、ニュ−ハンプシャ−州、バ−モント州、マサチュ-セッツ州、ロ−ド
アイランド州、コネチカット州)を中心に残っています。
1970年代半ばから北米で復活し、現在北米全体で年間4000棟ぐらい建てられています。
ティンバ-フレ-マ−(Timber Framer)と呼ぶ大工を養成するワークショップもさかんです。
ワークショップではティンバ−フレ−ムの実物をたてます。
−現代のティンバ−フレ−ムの事例−
バ−モントビルディング(3階建一部4階)写真左2枚および一般住宅:写真右
施工:Benson Woodworking
外観 2階廊下 住宅室内
上の写真をクリックすると、大きな写真がみられます。
誰にとっても永く住める
(Open-Built® Timberframe)の考え方
住宅を下の図のように耐用年数の異なる層(レイヤー)の集まりと考え、各層を分離できるような構法とするTedd Bensonの考え方です。

つまり、敷地は土地として在り続けるのに対し、構造体は100年から300年の耐用年数です。
屋根や外壁の外装部分は40年から100年で、取り換えが必要です。
生活する人によって間取りは10年から30年で変わっていくので、電気・水道・ガスの配線や配管は1年から10年で変わります。
家具などの配置は数ヶ月ごとに変わっているとおもいます。

このように、長い間に起きる住宅そのものと、住宅の中に起きる様々な変化に対応できなければ、誰にとっても永く住める木造住宅にはなりません。

この考え方は、ティンバーフレームだけでなく、あらゆる住宅や建物に利用できます。

この考え方の事例については、Bensonwood Homes のホームページをご覧下さい。

by Tedd Benson
出典:
「ティンバ−フレ−ムの建築方法:
        過去、それとも未来?どちらへ架ける橋となるか?」
                            −テッド ベンソン−
    木造建築研究フォラム 木造軸組構法国際研究集会英語版講演録
          「持続可能な木造建築の可能性を探る」 1997.4.19 より

"Timber Frame Building: A bridge to the past or the future?” 
                               -Tedd Benson-
"Towards the Realization of the Sustainable Wood Architecture”
                 Wood Architecture Forum in 1997.4.19