宮坂木造研究開発室の木造の家づくりガイド
生活の質
住み心地の良い木造の家に 樹齢より永く暮らせるように
昔から続けられてきた造り方に現代の技術をとりいれ
変化し続けるライフスタイルの器となる木造住宅をつくりましょう

設計事例

ここには、宮坂木造研究開発室の代表的な木造の住宅や建物の事例を取り上げました。
下の各設計事例をクリックしてください。
樹齢を重ねながら、樹は建ち続けています。
その樹を伐り倒してできる木造住宅には、樹齢と同じくらい永く建ち続けることが求められているはずです。
木造住宅の形は、樹の姿と同様に多様です。
「森林の風景を建築空間に再現する
 −持続可能な木造建築に向けて−:1997年4月」より
 「樹」と「木」という字を意識的に使い分けるようになったのは、ここに紹介させていただく建物の設計にかかわるようになってからです。木材は使ってもまた生えてくる、ということは小学生でも知っていることですが、「使ってもまた、生えてくる」時間の長さとそれに関わる人間の工夫や努力を知っている人は意外と少ないものです。私自身、林業の現場を見学するまでは木材は材木店で売られているもので、森林にあるところまでさかのぼって考える必要性を感じませんでした。それまでの設計は、流通している規格材をどう使えば合理的な設計になるかを考えていました。ツーバイフォーやいわゆる在来と呼ばれる構法の設計がその典型です。

  転機は'85年に初めて体験した天竜の林業の現場と'87年に福井県で行なわれた第4回公開フォラム(*)の際に訪ねた坪川家の見学でした。天竜では樹齢80年ほどの樹の前で『樹を育てるということは人の命を移し代えるようなものです。このくらいの樹を育てるには位牌が三つぐらい並ばなければできません。』という、林業家の話を聞きました。千古の家と呼ばれる坪川家では、室内に立ち並ぶ太い黒々とした柱や、柱をまたがるうねった梁や桁の木材と屋外の樹齢数百年の樹の立ち姿との関係に気がつきました。

  以後、木造を設計する際には樹の良さを生かすと同時に建築後もなんらかの形で樹の姿が建物に残るように心がけています。これは刻み場に搬入されてくる木材の検品に設計者が立会うだけでも出来ます。例えば、樹の「元と末」、「背と腹」を生かして建てた木造の室内では、木目の性状を知っていれば誰でも柱や梁の木目から、樹の立ち姿を想像することができるようになります。樹冠を形どる力枝の節の跡の間隔は、1年間で樹が成長する長さを示しています。これは四国の林業家の和田さんに教わりました。

  このようにすると、伐採した樹を利用した木造の建物に住む人々が、少なくとも元の樹の姿を忘れずに次の樹が生えてくるまでの時間を待ってくれるようになるのではないかと期待するからです。生き物としての樹の姿が目に残っている限り、木造の建物に愛着も生まれ、短い年月で壊して建て替えようとは思わないはずだと考えるからです。

  ここにあげた設計事例は、いずれもこのような考え方からまとめたものです。
 「伝統構法」という言葉を最近よく耳にしますが、伝統の継承には絶えずその時代の現代的な改良があった歴史を見逃してはならないと思います。持続可能な人間の生活にとって素材・技能・ライフスタイルは等価同源であるべきだと私は考えています。


(*)木造建築研究フォラム 主催
芝屋根の家ティンバ−フレーム−暮らし方が自由な家−木なりの家シンプルな骨組の家土壁と木の家柱立ての空間